
YOUR AIR vol.2
あなたの風景
花屋という仕事、私のリズムに合う服
横浜・天王町。相鉄線の駅から少し歩けば、昔ながらの風情が残る商店街が迎えてくれる。個人商店が軒を連ね、地域の人々の暮らしに寄り添うように佇む街並みに、そのお店は静かに佇んでいた。
ガラス張りの扉の向こうには、鮮やかな色彩を放つ花々や、植物が瑞々しい生命力を湛えている。店内に足を踏み入れると、花の甘い香りと緑の清々しさが混じり合い、都市の喧騒を忘れさせてくれる特別な空間が広がる。ここは、ローカルに根付き愛される花屋「The Bulb Book」。一歩足を踏み入れるだけで、植物たちの持つ自然な美しさと、それを大切に育む人の想いを感じることができる場所だ。
The Bulb Book
母親と二人三脚で切り盛りする
ローカルコミュニティに根付いた人気店
ローカルコミュニティに根付いた人気店
中鉢 祥太さんが母親と共に営む花屋「The Bulb Book」は、母親が花の行商からスタートし、ここ天王町に店を構えたのが16年前のことだ。中鉢さんが10年ほど前に店に加わって以来、母親と二人三脚で切り盛りする、ローカルコミュニティに根付いた人気店として愛され続けている。

「The Bulb Book」には、一般的な花屋にあるはずのものが2つない。1つは、花の鮮度を保つための「冷蔵庫」。そしてもう1つは、それぞれの花につけられる「値札」だ。
「花は切った時点で寿命が決まっています。だからウチでは、一番長持ちするような丁寧な下処理を何よりも大切にしているんです。冷蔵庫で無理に花の開きを抑えるよりも、植物本来の生命力を信じたいんです」
値札がないのは、「値段ではなく、純粋に花そのものと向き合って、心惹かれる一本を選んでほしいから」という母の想いを引き継いだもの。
訪れる人は自然と中鉢さんと対話し、自分だけの花を見つけていく。そこには作為的ではない、人と植物との心地よい関係性が生まれている。

Pure curiosity
植物が持つ本来の美しさを最大限に引き出すという
純粋な探求心
純粋な探求心
中鉢さんは、アパレル業界を経験したのち、家業を継ぐ形でこの世界へ足を踏み入れた異色の経歴を持つ。ファッションの世界で培った感性は、現在の仕事にも深く息づいているという。
「アパレル出身ということもあって、今でもファッションブランドのディスプレイ装飾などを手掛ける機会は多いです。ただ、自分を“フラワーアーティスト”だと思ったことは一度もありません。あくまで“職人”なんです」
クライアントから与えられたテーマやコンセプトに対し、プロとして最高の形で応える。そこにあるのは、自己表現よりも、植物が持つ本来の美しさを最大限に引き出すという純粋な探求心だ。
「植物には、言葉ではうまく説明できない圧倒的な力があります。僕らの技術は、その力を少しだけ手助けしているに過ぎないんです」
店に立ち、日々変わる植物の表情と向き合う時間。そして、外に出てブランドの世界観を植物で表現する時間。その両方を行き来することが、彼の引き出しを豊かにし、作為のない本質的な美しさを生み出す源となっている。

Comfort and functionality
機能性に頼りすぎない、心地よさとの付き合い方
庭仕事からウェディングシーンの装飾まで、仕事の内容は多岐にわたる。その日の仕事内容を想像しながら、TPOに合わせた服を選ぶのが彼の日課だ。そんな中鉢さんが今回袖を通したのは、NANGAの“DotAir®”セットアップ。
「袖を通す前から、着心地が良さそうだと感じていましたが、イメージ通りでした。すごく動きやすいし、今日は少し暑かったですが、驚くほど快適でしたね」
その快適さは認めつつも、「機能性に頼りすぎるのは違うのかもしれない」と彼は語る。
「いつも快適な服ばかり着ていると、それが当たり前になってしまう。時には厚手のTシャツを着て汗をかくことで、改めて快適さの価値に気づくこともある。そのバランスが大事なんだと思います」
ファッションのルーツを重んじる世代でありながら、若い世代の自由な着こなしにも刺激を受ける。
伝統と革新、機能性と感性。その「狭間」にいるからこそ、彼はモノの本質を見極め、自分らしい心地よさの基準を築いている。
DotAir®︎ Recommendations
DotAir®はとりあえず “1枚は必ず持っておこう”って感じ
そんな彼にとって、この“DotAir®”はどんな風景の中で活きるのだろうか。
「仕事はもちろん、どんなシーンでも着ることできるのが魅力的です。とりあえず“1枚は必ず持っておこう”って感じ。あと、個人的には旅に持っていきたいですね。軽くて小さくまとまるし、汚れたらすぐ洗える。旅先で外着として使うだけでなく、そのまま部屋着やパジャマにもなる。こんなに便利なものはないですよ」
それは、特別な日だけでなく、日常の延長線上にある何気ない風景にも溶け込む1枚だということの証明でもある。
植物が持つ、ありのままの生命力と向き合い続ける中鉢さん。彼が選ぶ一着は、過剰な装飾を削ぎ落とし、ただひたすらに心地よさを追求した“DotAir®”だった。それはまるで、彼が愛する植物のように、静かで、それでいて確かな存在感を放っていた。

Profile / Shop
中鉢 翔太 / Shota Nakahachi
横浜市出身。アパレルシーンを経験したのち、家業である花屋「The Bulb Book」を継ぐ。現在は店舗での販売のほか、数々のアパレルブランドや商業施設のディスプレイ、ウェディング装飾などを手掛ける。
IG:@nk8st
The Bulb Book
神奈川県横浜市保土ヶ谷区天王町1-9-2 角一ビル 1F
Open:12:00〜 Close:19:00
Close day:Monday, Tuesday