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NANGA PEOPLE - YASUHIRO HANATANI / ALPINIST

NANGA PEOPLE

YASUHIRO HANATANI

ALPINIST
何気ないおしゃべりから生まれた、
ヒマラヤ冒険のよきパートナー

 花谷泰広さんは八ヶ岳南麓、山梨県北杜市を拠点に活動する登山家である。幼少のころから、生まれ育った神戸の六甲山で山遊びに親しんだ。高校卒業後、故郷を離れて信州大学へ進学。野外教育を学びながら、伝統ある山岳部の一員としてヒマラヤほか国内外の山々で登山の経験を積んできた。卒業後は登山ガイドを生業としながら、自らの冒険も突き詰めていく。2012年にはキャシャール峰(6,770m)南ピラーを初登攀、これが高く評価されピオレドールを受賞。2015年からは若手登山家を養成するプロジェクト、「ヒマラヤキャンプ」をスタート。これは公募により選抜されたメンバーとともに、ヒマラヤの未踏峰あるいは未踏ルートに挑むというプロジェクトで、現在は1年に渡るトレーニングの仕上げを行なっているところだとか。

ヒマラヤ山行に欠かせないナンガのスリーピングバッグ

 そんな花谷さんのヒマラヤ山行に欠かせないのが、ナンガのスリーピングバッグである。
「ナンガがサポートしていた登山家の一人に山岳部の先輩である登山家、田辺治さんがいて、それがきっかけでブランドの存在を知りました。『国内で寝袋を専門に作っているメーカーがあるのか』、当時はそのくらいの認識だったと思います」

 接点ができたのは数年前、とあるイベントでのこと。共通の知り合いに紹介してもらったナンガの担当者に、何気なく「2人用の寝袋があればいいのに」と漏らしたところ、トントン拍子にそれが実現してしまう。
「こんなもの絶対できないだろうと思っていたので冗談半分で口にしたところ、『できるよ!』と快諾してもらって。自分が描いたフリーハンドのスケッチをもとに、いくつかプロトタイプを製作してもらいました」
 花谷さんのためだけに作られた特別なスリーピングバッグはその後も進化を続け、2016年には3人用スリーピングバッグが完成。ヒマラヤの遠征にはもちろん、それを携えて出かけている。

全体の重量が1.5kg以下の新発想のスリーピングバッグ

「普通の登山なら、それぞれがソロテントや個人装備を充実させるという山行もありなのでしょうが、ヒマラヤのような高所ではギアの軽さ、コンパクトさがシビアに求められます。個人装備より共同装備を充実させることがパーティ全体の荷物の軽量化になり、断然、効率がいい。3人のパーティで1つのテントというのは当たり前ですが、それと同じ発想で寝袋も2人用、3人用があればいいのに、と思ったのです」

 そんな花谷さんの要望に応えてできあがったのは、それぞれの体温を共有できるよう、内部がシームレスになった新発想のスリーピングバッグ。それでいて、独立したスリーピングバッグのような快適さや寝心地も確保している。

「全体の重量は1.5kg以下と決めていたので、その制限の中での適正なダウン量や大きさを見極めることに時間を費やしました。その甲斐あって、ヒマラヤで初めて使用した時も快適でしたね。この寝袋に寝たメンバーが『なにこれ!』って驚いたことを覚えています」

山に携行するギアには、
信頼できるプロダクトを選びたい

 こうしたやりとりの中で芽生えた、ナンガとの信頼関係。「独自の縫製技術にこだわっていて、使っているダウンも上質。それなのに値段も抑えられていて、シンプルにいいプロダクトだと納得できる」と評価する。
「一日の行動を終えて寝袋に潜り込んだとき、無駄なく身体を温めてくれる。作りもしっかりしていて、よく考えて作られたものだなと実感します」
 3回目を迎える「ヒマラヤキャンプ」の冒険も目前に迫っている。特別仕様のこのスリーピングバッグを携え、未来の登山家や山岳ガイドらとともに、今年もまたヒマラヤを目指す。

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YASUHIRO HANATANI

花谷泰広(はなたに やすひろ)

YASUHIRO HANATANI / 花谷泰広 (はなたに・やすひろ)

1976年生まれ。登山家、日本山岳ガイ協会認定山岳ガイド、オーダーメイドのガイディングを提供する〈ファーストアッセント〉主宰。甲斐駒ケ岳・黒戸尾根にある七丈小屋を営む。1996年、ネパールのラトナチュリ峰登頂でヒマヤラを初体験。ヒマラヤを中心とした海外登山に魅了され、以降、インド・メルー中央峰、ネムジュン西壁初登攀、キャシャール峰南ピラー初登攀などを成功させる。これまで自らが経験したヒマラヤでの体験を次世代の登山者たちに継承していきたいと、「ヒマラヤキャンプ」の活動に力を注いでいる。

YASUHIRO HANATANI
YASUHIRO HANATANI