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URBAN CAMP

with CarService

都市の刺激も自然の癒しも、すべて僕らを動かす原動力
クルマ趣味にキャンプを重ねて、仲間との特別な時間を過ごす

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 トヨタ・セラ、サーブ900、ポルシェ964。湾岸地区の道路脇に並んだ3台は一見すると少し変わった組み合わせだが、それが彼らの個性を象徴している。東京のカーカルチャーを牽引する「CarService」のメンバー4人は予定通り集合地点に集まり、今日のプランについて話し合ったあとでそれぞれの愛車に乗車。ウィンカーを灯しながらゆっくりと発進し、臨海道路を抜けて首都高湾岸線へと向かう。コンテナを運ぶトラックや上を大きく横切る旅客機の騒音に比べれば、彼らのクルマの排気音は控えめながら、それらは独特の存在感を放っていた。

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「都内の下道だけだと走るには物足りないから、首都高にのって海ほたるや大黒パーキングまでひと走りすることが多いんです」。それらはいずれもよくクルマ好きが集っている場所だが、彼らの目的は単なるカーウォッチングや自己顕示ではなく、ドライブそのものを楽しみ、仲間に会いにいくことこそが本質。目的地はあくまでドライブするための大義名分であり、クルマがとめられればどこでもいい。クルマは数ある話題のひとつで、仲間と話すことは最近ハマっていることや音楽ファッション日々の出来事だという。

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 主宰である橋本奎さんが服飾学生時代に作った、シルクスクリーンプリントのTシャツから発展したCarServiceは、ブランドでもなくカークラブでもない、クルマをコンセプトとしたミックスドメディアとして広がりを見せている。クルマの写真が言葉少なにポストされる彼らのInstagramはミステリアスだが、実際にはDJイベントをオーガナイズするような雰囲気でオールジャンルのカーミーティングを開催したり、ブランドとコラボしたアパレル、カープロダクトのプロデュースをしたりと、5人のメンバーが本業の合間を縫って、楽しみながら勢力的に活動している。

 レーシングカーの監修や自動車メーカーとのプロジェクトを手がけてきた実績からもその注目度の高さが窺えるが、彼らの根っこは常にストリート。クルマとファッションを融合させながら、東京のユースカルチャーを新たな視点で盛り上げているのだ。

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 そんな生粋のシティーボーイであるCarServiceの面々が運転する、趣の異なる3台のヤングタイマー車は、ゆったりと列を成しながらアクアラインを東へ。海ほたるをバックミラーで見送り、晴天の空に向かってアクセルを踏み込む。強風が吹く東京湾を越え、約1時間半のドライブを経て到着したのは房総半島の山中にあるキャンプ場だった。

 今回の場所探しの条件としていたのは、愛車が乗り入れられるオートサイト。木々の合間から差し込む日差しとほんのりと土の匂いが漂う空間にクルマを停めて、まずは一服。静かな林の中で背伸びをしてリラックスムードに包まれる。

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スペーシーなデザインのセラから降りてきた谷中誠さんは、今回の料理担当。渋谷で「drive-true」というドライブスルーもできる飲食店をはじめた彼は、フランス仕込みのハンバーガーをランチに振る舞うという。手慣れた感じでリアのガラスハッチを開けると、焚き火台や食材を取り出し、早速ランチ作りの準備に取りかかった。

 一方、ポルシェ964のオーナーである笹目千晶さんはフロントトランクからテントを取り出し、サーブ900に乗っていた伊東時生さんと橋本さんは、ガバッと開くリアハッチから、テーブルや椅子を運び出してサイトをレイアウト。小ぶりな彼らのラゲッジスペースは、キャンプギアでいっぱいだった。

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「実は、カーサビのメンバーでこうしてキャンプに来るのははじめてなんですよ」と彼らは笑う。クルマという共通の趣味を持ちながら、乗っているクルマの種類や職業、年齢、ファッションの趣向はバラバラ。それでも誰かが新しいことをはじめようとすれば自然と全員が乗っかる。この柔軟さこそがCarServiceが生み出すクリエイティビティーの根源なのかもしれない。

 サイトの設営も終わって焚き火の煙がやわらかく立ちのぼると、ゆったりとしたキャンプ時間がはじまった。澄んだ空気の中で感じる炎の温もりや、パティの焼ける香ばしい匂いが、都会の日常を遠くへ追いやっていく。

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「フォールディングチェアに腰掛けて、いつもより低い目線から愛車を眺めるっていうのも悪くない」

「本格的にアウトドアにハマったら、それに合わせたクルマが欲しくなっちゃいそう」

フェラーリF40のルーフに紐で道具を括ってキャンプする有名な人もいるし、意外性のあるクルマで楽しむってスタイルも捨てがたい」

「好きなクルマで温泉行ったり、観光したりする延長で楽しめると考えると……自分たちの場合、やっぱりキャンプすらドライブする口実になっちゃうね」

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 開放的な空間で焚き火を囲んでいると、それぞれが街中では気づかなかったクルマの楽しみ方に気がつき、妄想も構想も膨らむ。そして焚き火トークは転がるように次々と展開していったが、その中で橋本さんは印象的なことを語っていた。

「アウトドアを愛する人たちの中には、人里離れた自然豊かな場所で暮らすことに憧れる方も多いんだろうけど、僕たちは割と対照的で、排ガスさえも愛せるほどにクルマや都市生活が好き。そしてなにより、人との交流から生まれるカルチャーに魅了されている。だけど、ずっと同じ場所にいても考えが凝り固まってしまうから、時々こうしてアウトドアに身を置いてみるべきなんだろうね。自然を逃避場所にするわけじゃなく、たまに羽を伸ばすっていうのはよいバランスなんじゃないかな。それに、絶対行き帰りに気持ちの良い道をドライブできるだろうし」

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 東京からわずか数時間の身近な自然に向かい、クルマを目の端に眺めつつキャンプに時間を投じる。心地よい風と仲間の笑い声が混ざりあい、時間はゆるやかに進んでいく……。刺激的なアーバンライフも穏やかなアウトドアも、すべてが混在するのが彼らの世界観だ。クルマを取り巻くあらゆる楽しみを吸収して、仲間と一緒にカルチャーの交差点を走り抜ける、そんな「クルマ+α」の魅力を体現するCarServiceの姿は、これからも多くの共感を呼ぶだろう。

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CarService

20,30代のクルマ好きのメンバー5人からなる、カーカルチャーとファッションを融合したレーベル。Instagramではメンバーが気になったクルマのスナップを投稿。イベントの開催。アパレルやジュエリー、カーアクセサリー、パーツなどをプロデュースして販売を通じて、クルマに興味を持つきっかけを提供している。

IG:@_carservice

Photography: Misaki Tsuge

Text: Jumpei Suzuki

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