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URBAN CAMP

with Metropolis Fishing

貨物船と旅客機が海と空で交差する。そんな光景を眺めながら、ルアーを泳がせて。
東京のビル群を横目に、日常にアウトドアを持ち込む。釣り人たちのアーバンキャンプ。

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はじまりは釣具屋でのナンパから

 原宿のスケートショップで働く笹本海都さんと、祐天寺のサロンに勤める佐々木高嶺さん。普段ふたりが顔を合わせるのは、太陽がとっぷりと沈んだ頃。今日のように昼から集まるのは年に数回程度らしい。

 東京で暮らす20代後半で、しかもストリートカルチャーにどっぷり浸かっている若者なら、夜の居場所は繁華街の酒場かナイトクラブだと想像してしまう。もちろん酒を飲み交わす夜もある。だが、ふたりがいつも落ち合うのは東京湾や河口近くの駐車場だ。互いにクルマを走らせ、釣具とともに都会の灯りがきらめくポイントへ向かう。

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「面識はなかったんですが、スケーターでモデルの『Kozakana』のことは一方的に知っていました。その頃、ぼくは東京でも釣りができることを知って、たまたま渋谷の釣具屋に道具を買いに行ったら、買い物している彼を見つけて。そこで思い切ってナンパしたのが出会いでした(笑)」と高嶺さん。

 Kozakanaこと海都さんは八丈島出身で、幼い頃から海釣りが身近にあった。一方の高嶺さんは福島で野池のバス釣りに熱中。お互いに上京後しばらくは釣りから離れていたものの、時を同じくしてシーバスフィッシングに目覚め、ふたりで一緒に釣りに出かけるようになったという。

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笹本 海都(KOZAKANA)さん[左]、佐々木 高嶺さん[右]

「出会って3日後には一緒に竿を振ってましたね。最初は自転車だったけど、終電も始発もない時間に上がる日が多くてキツくなって。それで途中からカーシェアサービスを使ったのですが、月々7万円くらいかかることもあり……。だったら、って高嶺がマイカーを買って。のちにぼくもクルマを手に入れました。車中泊もするようになり、釣り方も魚種も広がって、楽しみ方が増えてきた気がします」

 海都さんいわく、人工物を遊び場へと変えてしまう発想力や場所を愛する人々がつくるコミュニティの厚み、そして狙い通りに技をメイクできたときのスケートの達成感は、都会の釣りにも通じるという。

 ふたりの地図アプリに並ぶピンは、渋谷や原宿ではなく、湾岸沿いに無数に打たれている。場所取りも情報戦も激しい東京で、どう自分たちのスタイルで一本にたどり着くか。クルマを持ってからは、それぞれのスケジュールに合わせてソロで釣る日も増えたというが、その探究心は尽きそうにない。

 そして、釣りの延長線上で情熱を注いでいるのが、出会って早々に意気投合してはじめた〈Metropolis Fishing〉だ。この小さなブランドは、自分たちが釣りのときに本当に着たい服を作ろうと、2020年にスタート。当初は既製ボディにプリントを載せるところからだったが、いまではオリジナルデザインに機能素材も取り入れ、都市生活にも釣りにもなじむアパレルを展開している。

「釣りだけじゃなく、ファッションもスケボーもやって、仕事もして。そういう毎日の中で、ぼくらはこのスタイルがいいと思っている。その想いを伝える表現方法のひとつがブランドでなんです。もちろんモノにもこだわるけど、商品そのもの以上に、都会での釣りの楽しみを感じてほしい。続けていくうちに、そういう気持ちが強くなってきました」

 自然の豊かな土地で育ち、釣りが日常にあった少年たちが、都会でも遊び続けている。それだけのことかもしれない。けれど、自分たちの楽しみにまっすぐであること。その姿勢こそ、多くの人が見習えるところではないだろうか。

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都会と外遊びのギャップを嗜む

「こんな23区内でも、オートキャンプができるんだね」。ふたりがクルマを停めたのは、海浜公園内のキャンプ場。林間サイトの木々の間からは、夕陽にきらめく東京湾がのぞく。彼らいわく、都会での釣りはアクセスの良さが魅力。ビル群を背にルアーを投げ込む。その都市と自然が同居するあの感覚は、ここで過ごすキャンプにも通じているのだろう。

 スバルのツーリングワゴンを愛車とするふたりは、遠征する際は後部座席をフルフラットにして車中泊をすることも多い。ただ、テントを立てて腰を落ち着けるキャンプに気が向くようになったのは、最近になってからだという。

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「釣り人って『やっぱ自分のギアは最高』みたいな、所有欲が強い人が多い気がして。ぼくも例に漏れずそのタイプで、道具にはこだわるし、多少無理してでもクルマを持った。そのノリでいくと、キャンプギアって物欲を刺激するものが多いから、下手に手を出せないんですよね」と海都さんは笑う。

「お前はリールにしても、ロッドにしても一番いいやつ買っちゃってるから余計にね。……とか言いつつ、ぼくはアメリカのロングトレイルを歩こうと計画中だから、軽量なキャンプ道具を揃えないと」と高嶺さん。ふたりの趣味人ぶりはなかなかだ。

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 クルマを手にしたことで、終電を気にしなくていいぶん行動の自由度が上がり、遠出のときも車内でそのまま眠れる。彼らにとってクルマは単なる移動手段ではなく、街とフィールドの境界線を軽やかにまたぐための移動する拠点。そして同時に、釣行の選択肢を増やしてくれるいちばん高価な釣り具でもあるのだ。

 そうした遊びのステップアップの延長上に、今日のキャンプがある。昼間から設営し、気が向いたら竿を出す。いつも暮らしている東京の街で釣りをして、さらにキャンプまでつなげば、日常の中の非日常感が濃くなっていく。このスタイルは確かに正統派ではないかもしれない。でも、だからこそカウンターカルチャー的なワクワク感を持って楽しめる。

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 ふたりが出会ってから6年。自分たちのスタイルを磨くほど、遊びの幅も少しずつ増えていった。東京という都会のフィールドならではの過ごし方を、自分たちなりに突き詰めてみる。その過程で新しい楽しみ方が見えてきて、いつの間にか仲間の輪もゆるやかに広がっていく。まさに今、ふたりはその手応えを確かに感じているという。

 釣りとファッション、スケートにクルマに仕事。日々のあらゆる要素を自分たちの目線でつなぎ、遊びの地図を更新していく。その繰り返しこそが、彼らなりのアウトドアとの向き合い方なのだ。

URBAN CAMP 着用アイテム

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笹本海都(KOZAKANA)

東京都・八丈島出身。スケートボードを軸に、モデルとしても活動。原宿のスケートショップ〈FTC TOKYO〉で働く傍ら、釣りへの高い熱量から佐々木高嶺とともに〈Metropolis Fishing〉をスタート。アフターワークは趣味の時間に充て、スケートボードとロッドを持ち替え、街とフィールドを往復する日々。遊びを本気で追求する等身大なライフスタイルが、同世代から支持を集めている。

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佐々木高嶺

福島県出身。祐天寺のサロン〈Guru’s Cut & Stand〉スタイリスト。ストリートやファッション界隈の顧客を多く抱え、カルチャーを反映したスタイル提案で高い支持を得る。2020年より笹本海都と〈Metropolis Fishing〉を立ち上げ、デザインも担当。休日や仕事終わりに東京湾へ向かい、睡眠時間を削ってまで一匹を追う。その妥協のない遊びへの情熱は、クリエイションの源泉ともなっている。

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Photography: Misaki Tsuge
Text: Jumpei Suzuki