「NANGAMOUNTAINLABORATORY(NML)」の存在
私たちにとって、モノづくりは検証の連続。素材選定や機能を引き立てるデザイン、そして縫製の処理に至るまでを一つ一つ再評価し、必要に応じて定番アイテムのアップデートも行なっています。そんなNANGAイズムの中核を支えているのは、「NANGAMOUNTAINLABORATORY(NML)」の存在。
このNANGA独自の研究機関では、ダウンの力を最大限に発揮する方法を追求し、アウトドアのエキスパートと協力をして極地に対応する製品の開発に取り組むほか、そこで培ったノウハウを日常で使うアイテムに落とし込む作業を行っています。その代表的な例が、スリーピングバッグの最高峰である「LEVEL8」の開発。その高レベルな研究で得られたダウンの活用法は、ダウンジャケットの「LEVEL7」やGOODSLEEPINGの羽毛布団に息づいているのです。
ダウンの可能性を引き出す、だから温かい
本稿に掲載した製品写真は、ダウンメーカーであるNANGAのこだわりを可視化したもの。LEDライトを用いて光らせたマネキンを製品内に仕込み、内部から光を照らすことで、どのようにダウンが配置されているかを表現しました。光が透過せず暗くなっている部分はダウンが多く配置され、保温性が高くなることを示しています。この擬似的なダウンのレントゲン写真をご覧いただくと、NANGAがいかにダウンパッキングに心血を注いでいるかがお分かりいただけるはずです。
一般的にダウン製品の保温性は、ダウンのかさ高を表すフィルパワー(FP)と封入量で評価されます。例えば、NANGAのダウンジャケット「AURORA TEX DOWN JACKET」には760FPのDXダウンを150g使用。「LEVEL7」は860FPのSPDXダウンを240g使用。これらの数値だけでもその保温力の高さを判断できますが、そのダウンの性能を活かすも殺すもキルト構造や配分次第ということはあまり知られていないのではないでしょうか。
実際、異なる品質のダウンを同じ素材と設計のジャケットに仕立てて試験を行った結果、設計次第では保温性能に大きな差が出ない場合もあることがわかりました。このような客観的なデータをもとに私たちが焦点を当てたのは、ダウンを封入するキルト構造と適切な量の関係。ダウンのクオリティや重量を変えずに、いかに保温力を引き上げるかを検証するため、NMLではさまざまなフィルパワーの羽毛、バッフルの設計の組み合わせで比較研究を繰り返し行なってきました。
端までダウンが入りにくくコールドスポットができやすいシングルキルトではなく、ダウンがしっかり開き断熱材となる空気層を作ることができるボックスキルト構造。そして全身を温めるべき箇所に配慮してダウンを配置することが、私たちが導き出した最上のダウン製品の作り方です。
ボックスキルトの深掘りをして、日常使用をベースにしたダウンジャケットにも技術を投入し、寒さの厳しい冬山ではなく、デイリーライフを快適にする暖かさに照準を合わせた設計を行いました。
また「AURORA TEX」シリーズなど、デイリーに着用するモデルは設計を見直し、現代的な着用感に合わせてハーフサイズほど大きくリサイズ。肩や背中部分で保温力を高めることで、変わらぬ温もりを提供しています。さらに今季からは、これらのダウン製品とのレイアリングを前提としたサーマルレイヤーである「LEVEL3」もラインナップ。NMLによる製品分析と開発の結果は、スリーピングバッグやダウンジャケット、羽毛布団だけでなく、今後はダウン 以外のアイテムにも派生していきそうです。
AURORA TEX DOWN JACKET
「LEVEL8」で得た知見を、ベーシックモデルであるAURORATEXDOWNJACKETにも踏襲し、バッフルそれぞれに最適な量のダウンを封入。腕を曲げた際にダウンが潰れてしまわないよう、今季から肘を前ぶりの立体設計になりました。
LEVEL8 -23 AURORA TEX LIGHT
研究データに基づき開発された「LEVEL8」で は、台形バッフルが連続する構造を採用。ダウンの性能を最大限に発揮し、高い保温力を引き出します。また、コールドスポットを減らすため、顔 や肩、ウエストのぐるり、そしてサイドファスナーに沿ってドラフトチューブ(ダウン入りの隔壁)を追加し、空気の流動を少なくしてバッグ内に温かい空気の層を作ります。さらに足元からの冷えに備え、フットボックスは立体設計にしてダウン量も調整。動きやすいだけでなく、ダウンを潰れにくくして保温性を高めています。
DOWN DUVET SINGLE DX (PENTAGON)
スリーピングバッグのノウハウを用いたボックス キルト構造採用のNANGAのダウンデュべは、身体に沿わせることにより保温力のムラを軽減。マチ生地が取られてダウンの性能が発揮されるため、同品質、同量のダウンを使用した一般的な他社の掛け布団と比較して約8%高い保温力を誇ります。中でも五角形キルトを持つモデルは、場所によってキルト内のダウン量を3段階に調整。布団の中心に暖かい空気を溜め込めるように設計しました。独特のキルトデザインは、コールドスポットの発生や冷気の侵入防止の役目も果たします。